12/05/2011

フランスでの出会い


日本で西洋美術の作家についての地道な調査をしようとすると、
まず国内にある資料を虱潰しに紐解いて、
さらに今ならインターネットに上がっているデータ化された一次資料なども参照して、
とあれこれ手を尽くしても、たどり着ける情報にはどうしても限界があります。


そこでフィールドワークが必要になってくるわけですが、
ヨーロッパなんて、そう頻繁に行ける距離ではありません。


美術館で黙々と働いていた頃、所蔵されていたモーリス・ドニの作品を調査するに当たり、
めぼしい研究書にも出ていない、一次資料も購入時の証明書しかない、
カタログ・レゾネもまだ出版されていない、渡仏する時間も資金もない...
という八方塞がりの状態で、
藁にもすがる思いで送ったメールに返信をくださったのが
ドニの孫に当たるクレール・ドニさんでした。

クレールさんが快く提供して下さった資料のおかげで、
私のささやかな論考も何とか形になり、
またドニの作品の造形的な面への関心も持続しています。

そして先日、サン・ジェルマン・アン・レーのドニ美術館で
クレールさんの解説があるということで、
直接お会いできる機会を逃すまいと、2度目の美術館訪問。

クレールさんは、とてもおおらかで快活な方で、
展示室の作品を前に、ご自身の貴重な体験や思い出を交えながら
たっぷり2時間近く語ってくださいました。

前回来た時は気がつかなかった、というか制作の場に居合わせなければ
知りようがないモチーフやタイトルの意味など、わくわくするようなお話ばかり。

あっという間に閉館時間になり、他の方の質問が終わるのを待ってから、
左手にドニについて書いた紀要(日本語...)、右手に名刺を携えておずおずと自己紹介すると、
2年も前につたないメールであれこれと質問を送った私のことを覚えていて下さったのか、
あぁあなたねと言わんばかりに、親切にも自宅に招き入れて下さり、
ドニの蔵書が並んだ本棚(!!)の中から貴重な資料を見せていただきました。

日本からの訪問者ということで、ドニが高校生のときに読んでいたという日本についての本。
いわゆるジャポニスムの本ではありませんが、ドニと日本文化との最初の出会いが
高校生のときだったというのは驚きです。

帰り際、勤勉な学生にあげるために取っておいたのよと
ドニの日記3巻を手渡され、これはもう勤勉になるしかないと決意を新たにしました。



博士論文のテーマに引き寄せつつ、ブルターニュ地方でのドニの絵画制作について、
フランス語でも何か形にできるといいなと思います。

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