1/22/2013

パリの雪



パリはここ数日雪が降ったり止んだり、
気温は連日氷点下、冬真っ盛りです。


パリ市内は人通りも多く、少し積もってもすぐに溶けてしまいますが、
私の住んでいる寮では地面が土や芝生ということもあり、
ある朝目覚めると一面の銀世界が広がっていました。


すっかり嬉しくなって、朝食を食べた後、
午前中の図書館行きを放棄してカメラ片手に散策。

日本館、雪が積もると趣きが出ますね。

こちらのムッシューはとっても寒そう....

お約束の雪だるま。

真っ白な雪の上を犬が散歩していました。




パリの雪はふわふわしていて、積もりたての白い絨毯のうえを
そっと歩くとふわっと沈み、まるで雲に乗っているような気分でした。


1/17/2013

お見送り



昨年の暮れ、猫年二十歳を迎えたタマが天国に旅だってゆきました。




おばあちゃん家に行くと、いつも飛びかからんばかりだったポチは
宿敵の不在に気がついているのかな。

願わくば、天国でお母さん猫と再会して、
二匹丸くなって眠っているといいなと思います。

1/03/2013

Ai Wei Wei & Marina Abramovicドキュメンタリー映画



最近、パリで2本のドキュメンタリー映画が封切りになり、

早速見に行ってきました。

ひとつめは、Ai Wei Weiの「Never Sorry」。

中国人アーティストAi Wei Weiといえば
日本では2009年に森美術館で大規模な個展がありましたが、
私は2010年に白金高輪のMISA SHINギャラリーで見たキューブライトが
鮮明に記憶に残っています。



この作品を見ていなければAi Wei Weiの印象は違っていたかもしれないので、
誘ってくれた大学の後輩に感謝です。

2011年の春に中国政府に勾留されたというニュースが世界を駆け巡り、
デモやソーシャル・メディアを駆使した大規模な署名活動にまで発展、
その後無事に保釈、2012年にはパリのJeu de Paumeで個展が開催されました。

ドキュメンタリー映画「Never Sorry」はそんなAi Wei Weiに密着し、
プロジェクトの準備や家族との時間、保釈後の様子、
作品や現代の中国についてのインタヴューなどかなり踏み込んだ内容となっています。

ときに殺伐とした光景もありますが、動物や子どもに囲まれ、
お茶目なAi Wei Weiの様子が伝わって来る映像です。

そしてアーティストを取り巻く現代中国の状況の厳しさや不条理さに直面しても
決して悲観せず、ときにそれをユーモアにすら変えて、
何かを生み出し続ける姿はとても魅力的でした。


ふたつめは、Marina Abramovicの「The Artist is present」。

2010年に開催されたニューヨーク、MOMAでのアーティストの大回顧展の舞台裏。
展覧会タイトルが示す通り、マリーナ・アブラモーヴィチ本人が
会期中、開館から閉館までのあいだずっと会場の椅子に座り、
まさにそこに"Present[存在する]"という試みが話題を呼びました。

私が彼女の作品を初めて知ったのは、2004年の春、
地元の猪熊弦一郎現代美術館で開かれた個展です。
すでに上京していたので、春休みに帰省したときに見たのでしょう。
現代アートはおろか、美術といえば印象派やゴッホを思い浮かべていた当時の私には、
同じ「アート」として展開される彼女のパフォーマンス、すべてが衝撃でした。

アブラモーヴィチは1997年にはヴェネツィア・ビエンナーレの金獅子賞を授賞、
(ちなみに同年に開催された世田谷美術館の「デ・ジェンダリズム」展にも出品)
2004年にはすでに世界的に知られている作家だったのですが、
そんなこととはつゆ知らず、
自らの肉体を痛めつけるようなパフォーマンスを続ける背景と必然性をもった
途方もない女性アーティストと映りました。

この衝撃はのちのちにまで残っていたようで、
大学院の入試のときに、(妙な試験でどんな主題でも論じられる問いだったので)
咄嗟にこの展覧会を思い出してアブラモーヴィチについて書いたのを覚えています。
そして、2010年にはニューヨークの展覧会にも足を伸ばすことに。

1週間の滞在中に2回ほど展覧会を訪れましたが、
しばらく彼女の姿を見ていたものの、それほど長く留まることができず、
今回のドキュメンタリー映画を見て、
改めてあのときMOMAで起こっていたことを少し理解できたように思います。



いずれの映画も、アーティストという肩書きを超えて、
それぞれ異なる社会的背景を背負って現代を生きる2人の人間の
生き様を描いた作品。


日本で公開されるかどうか分かりませんが、
美術に関心がある人、政治に関心がある人、社会問題に関心がある人...
ジャンルの垣根を超えて、すべての人に見て欲しい映画です。


謹賀新年


みなさま

新年明けましておめでとうございます。

かのレオナルド・ダ・ヴィンチは夕暮れ時の女性の陰影には
この上ない美しさが宿っていると言いましたが、
わが家の愛犬も然り。



瀬戸内海に沈む夕日の薄紅色に浸され、
ほんのりと気品すら漂います....(飼い主バカですみません)。
美しいポチの写真で新年のご挨拶とさせていただきました。


2012年も気付けば去り、すでに2013年の1月3日。
去年の今頃何をしていたかなとダイアリーをめくると、
「BN(国立図書館)でアミアンでのコロックの発表準備....」とあります。
あれから1年も経ったなんて信じられない心地がする一方で、
日記を読み返すとやっぱり色々あったなぁと実感。

2012年は留学1年目ということで、渡仏前にぼんやりと目標にしていたことを
少しあせりながらも実現できた年でした。
それは、フランスで研究発表をして、研究者たちと交流するということ。
前回の留学時の無念さも相俟って、
フランス人たちと同じ舞台でということが、
半ばオブセッションのようになっていたかもしれません。

まだまだ満足とはいきませんが、
3つの発表を何とかやり遂げることができました。
学会を通して出会った友人たちとの関係を、将来へと繋げていけたらと思います。


そして展覧会にも貪欲に足を運びました。
いきなりですが、2012年の私の美術体験ベスト5!

1.ル・カネでのボナール美術館と風景
  個人美術館がオープンしたということにも感無量だったし、
  コート・ダジュールの海を見渡す丘陵の街を歩いていると
  ボナールの絵のなかに入ったような感覚に。
  光や空間を実際に体験できた貴重な3日間でした。  

2.ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミュラー @ドクメンタ
  日本のメゾン・エルメスや天保山のサントリー美術館での感動が蘇る
  森のなかのサウンド・インスタレーションと
  ipodを手にカッセルの駅構内を歩いた詩的な時間。
  表象のニューズレターREPREに展評を書かせていただきました。

3.ヴィンタートゥール美術館&オスカー・ラインハルト コレクション
  上質なコレクションが然るべき場所にきちんと収まった展示空間。
  何かテーマがあるわけではないんですが、
  時間の蓄積のなかでコレクターたちが築いてきた文化が浸透していました。
  作品たちに再会できたことも純粋に嬉しかったです。

4.Anri Sala 展 @ポンピドゥーセンター
  展覧会最終日に偶然通りかかるという運命的な出会い。
  ポンピドゥーセンター1階のガラス張りの展示空間。
  最終日に集った大勢の人々。外を動く群衆の気配。
  巨大スクリーンに映し出される映像とオルゴールの音色。
  色彩と沈黙。
  
  今年のヴェネツィア・ビエンナーレのフランス代表だそうです。楽しみ!!!!

5.Hatakeyama Naoya / Natural Stories @アムステルダム Huis Marseille
  「今だからこそ、美学と倫理の関係を注意深く掘り下げ、ロマンチシズムと
   政治性の関係をもっと批判的に考察すべきなのです。アートに関わる者が
   その努力を怠るなら、それこそが今回の災害に対するアートの敗北なのだと、
   僕は思います」(畠山直哉「産経新聞」2012年3月18日)
   展覧会とこの言葉を胸に留めておきたいと思いました。



まだまだ他にもたくさんの展覧会を見たけど、
ベスト5はこのようになりました。


今年は、就職と帰国も見据えつつ、
本腰を入れて博士論文を進める年にしたいと思います。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。