12/31/2011

パリ、美食と音楽と美術の2日間

2011年も幕を閉じようとしている12月29日と30日、日本からお客様が。
ロンドンやパリに魅せられ、舞台美術をこよなく愛し、
ご自身の関心をお仕事にも結び付けていらっしゃる素敵な女性です。


かつて私が初めて担当した展覧会をご一緒して、
お仕事をきっかけに知り合った方ですが、
こうしてパリという地で再会し、美術や音楽、
舞台といった同じ関心を共有できたのはとても嬉しいことでした。




29日はSainte Chapelleでバロック音楽のコンサート&カフェ・コンスタンでディナー。


夜のSainte Chapelleに入ったのは初めてです。
ステンドグラスは闇に覆われていましたが、
やわらかな光に照らし出された教会内部の装飾と、
ゴシック建築の高い天井に吸い込まれてゆく澄んだ音色が幻想的でした。






暖房もない、石造りの教会内部は凍える寒さでしたが、
その分、楽器が奏でる音が清澄に響いていたのかもしれません。


コンサートの後は、ヴァイオリンがマークのカフェ・コンスタンへ。
コンスタン氏という有名シェフがエッフェル塔のふもとに開いている
カジュアルなレストランです。


コンスタン氏がおばあさんのレシピにインスパイアされているというだけあって、
素朴で、やさしい味わいのお料理。


予約は受け付けないというシステムなので、
お客さんたちはバーで一杯やりながら、ひたすら待ちます。


前菜は、パイにガンバス海老とホウレン草、レモンのソース。
さわやかなソースと海老は王道の組み合わせでした。

メインは、鱸のグリルとさつまいものムスリーヌ
(泡立てたクリームで仕上げたソース)。

そしてデザートは、プロフィットロール。
アイスクリームを挟んだシューに、
テーブルの上で熱々のチョコレートソースをかけてくれます。

フランス料理の神髄(だと勝手に私が思っている)ソースが特徴の3品。
ふわふわのシトロン・ソース、なめらかなさつまいもソース、
そしてほろにがいチョコレート・ソース。
どれもシンプルな素材の味を引き立てていました。


お食事をしながら、日本の展覧会のこと、解説や音声ガイドのあり方について、
留学生活、今まで見たオペラやバレエのことなど....話は尽きず、
楽しいディナーとなりました。




2日目は、15区のレストランJadisで待ち合わせ。
ギヨーム・ドラルジュ氏という、三ツ星レストランで修業を積んだ
弱冠30歳のシェフが開いたお店です。


こちらも店内はカジュアルな雰囲気ですが、お料理は絶品。

前菜は、かぼちゃの種、フォアグラ、クルトンを散らしたお皿に
ポティマロンというカボチャのスープを注いだ一品。
ヴィロードのような舌触りのスープでした。



こちらがポティマロン。




メインに頼んだのは、イベリコ豚のステーキ。
イベリコ豚は信じられないくらいやわらかくて、
鮮やかな彩りの付け合わせの芽キャベツも本当においしかったです。




デザートは、洋梨のコンポート、オレンジのケーキ、ムースが渾然一体となった
楽しい一皿。


こちらに来てからというものお肉を食べ慣れていない私は
イベリコ豚二切れでギブアップしてしまいましたが、
Jadisのお料理、感動的においしかったです。私が今まで食べたフレンチの中では一番。
しかもこのクオリティと量で29€というコストパフォーマンス。
3週間ごとにメニューが変わるそうなので、また行きたいと思います。

やっぱり三ツ星はすごいんだなぁ...



満ち足りたランチの後は、小雨の降るなか、16区のギマールによる
アール・ヌーヴォー建築をいくつか巡って、
ジャックマール・アンドレ美術館のフラ・アンジェリコ展へ。

相変わらずの長蛇の列でしたが、予約をしていたので一瞬で中へ入れました。



有名なフィレンツェの《受胎告知》に見られるように、
フラ ・アンジェリコといえば、聖母マリアや天使の柔和な表情と、
ラピス・ラズリの青、ローズ・ピンクの優しく鮮やかな色合いが特徴です。


この展覧会は、色鮮やかな手彩色の写本や、
《隠遁地》を描いた、岩山に小さな家が点在する初期の不思議な構図の作品、
聖母マリア像、聖人、キリスト、最後の審判、
遠近法や光の表象、同時代の画家への影響など
様々な主題や視点からフラ・アンジェリコという画家に迫る構成。


これほど多くの作品が残されていることに驚き、
またフィレンツェのサン・マルコ修道院で見た静謐なフレスコ画の記憶が蘇りました。


フラ・アンジェリコの絵は、細部まで丁寧に描きこまれていて、
作品の前に立って焦点を合わせると、
視線が画面の奥深くまでいざなわれるような、心地よい時空間が開かれています。




展覧会鑑賞後は、展示室の雰囲気がそのまま流れ込んだかのような
カフェでティータイム。壁に掛かるタピスリーに、
深紅の布で覆われた植物モチーフの照明。壁の装飾レリーフも繊細です。

お昼にもデザートを食べたけど...やっぱりショコラ・ヴィエノワ。





素敵な空間で、見たばかりの展覧会や、イギリスのタピスリー・コレクションのこと
来年への期待や抱負など、ゆっくりとお話ができました。


年越しのロンドン滞在もぜひ楽しんでいただきたいです。



Comédie-Française展 Petit Palais


Grand Palaisのお向かい、Petit Palaisで開催中の
Comédie-Française展に行ってきました。



この劇場の歴史に多方面から焦点を当てた渾身の展覧会です。
まず最初に登場するのがモリエール。
Comédie-Françaiseの誕生が1680年、モリエールは1673に亡くなっているので
直接関わることはありませんでしたが、
彼が残した数多の戯曲は、劇場の礎作りに多大な貢献を果たしました。


ニコラ・ミニャール《カエサルの役を演じるモリエール(コルネイユ、ポンペの死)》
1661-1665年

今でも劇場が「モリエールの家[Maison de Molière]」と呼ばれるのはそのため。
モリエールが使用していた懐中時計、肘掛け椅子、帽子なども展示されていました。
その他にも、ラシーヌ、コルネイユ、ヴォルテール、マリヴォー
歴史に名を刻んだ劇作家たちの肖像画や彫像がずらり。

舞台で上演中の劇の一齣を描いた油彩画やデッサン、
そして興味深かったのは、観劇に訪れた聴衆たちを捉えた躍動感あふれる
エドゥアール・ジョゼフ・ダンタンの《初日の夜のコメディ・フランセーズの幕間》
19世紀末、ゾラも描いていた劇場の熱気が伝わってくるようです。




さらに、ラシェル、ジャンヌ・サマリー、サラ・ベルナール、
エドゥアール・ド・マックスら名優たちがそれぞれの役の衣装を纏った肖像画や
彼らが実際に身につけた装身具も並びます。

ルノワールやコクトーが描いた役者の肖像画もあり、
劇作家、音楽家、役者、同時代の画家たちが集まってひとつの文化を
作り上げていたのだなと思います。

ジョルジュ・クレラン《王妃役を演じるサラ・ベルナール(ユゴー、リュイ・ブラース)》1879年

1680年の創設以来、Comédie-Françaiseは1000人以上の作家の2700作品を越える
戯曲を上演してきましたが、新しい作品は無条件に受け入れられるわけではなく、
現在も続いている、俳優と外部の人物で構成された脚本審査委員会[comité de lecture]の
審査を経なければなりません。

アンリ・アドルフ・レスモンの《1886年の脚本審査委員会》では、
くつろいだ雰囲気の中で、戯曲を書いたアレクサンドル・デュマ ・フィス本人が
朗読する場面が描かれています。




そして、これまでの舞台美術の模型もずらり。
クラシカルな建築を模したものから、現代的なデザインまで、
どれも奥行きと舞台の向こう側への広がりを感じさせる空間構成でした。




展覧会のポスターは、やっぱりモリエールの肖像画です。

12/28/2011

冬太り


寒いのが嫌いなポチはどうしてもこたつに入りたいようです。

 ぐいぐい。


こたつがだめでも、ふとんと毛布の海にくるまっていたい...。



でもそんな怠惰な生活を送っていると、太ってしまいます。






心なしかお顔がふっくら。冬仕様の毛になっただけ?? 


この見事な二重あご...やっぱりお肉も増えているようです。
今は撮っちゃだめとばかりに手を振っていますが、時すでに遅し。




身をもって、習性の似た飼い主に警笛を鳴らしているのかも!!!!
冬太りには気を付けましょう。

アルザス地方旅行記 ⑦アルザス博物館 [Musée Alsacien]


アルザス旅行の最後に訪れたのは、この地方の伝統的な暮らしぶりを
伺うことのできるアルザス博物館。

木組みの家造りに必要な大工道具。





ここでもモミの木は天井から。


台所は、どこか素朴でどっしりとしています。
こんなオーブンでベックオフを焼いたらおいしく仕上がりそうですね。







小さい犬が蓋に乗っています。何を入れていたんだろう。






こちらはアルザスのお菓子の道具。クッキー型やお菓子に模様をつけるための板。




日本の和菓子の菓子木型にも通じるものがあります。












装飾文様で飾られた小物類にもアルザスらしさが光ります。




コウノトリの絵と赤ちゃんの小さなベッド。






アルザスは、造花造りもさかんだったそう。職人さんの部屋という雰囲気です。








こんな窓辺のテーブルで読書やティータイム...素敵ですね。


お祈りのためのグッズ。






これは、何と小麦粉を保存するためのお面。
口から小麦粉が出てくるのだとか....
何か由来があるのでしょうが、どうしてここにだけ妙なセンスを発揮するのか。




糸巻きをする女性。おとぎ話に出てくるような姿です。



子どものおもちゃ、ドールハウス。
子どもに遊ばせるのがもったいないくらい、精巧に作られていました。



アルザス地方旅行記 ⑥ロアン宮 [Palais Rohan] 〜アルザスのヴェルサイユ宮殿


ロアン宮は、ストラスブールの大聖堂の隣に広がる宮殿です。
18世紀の半ば頃にArmand Gaston Maximilien de Rohanという枢機卿のために建造され、
現在は絵画を中心とした美術館、装飾美術館、考古学博物館として
コレクションを公開しています。



教会会議の間。白いカーテンが上品。








司教の間。




王の部屋。かつては、王様の寝起きもちょっとしたセレモニーだったとか。
2度寝なんて絶対できませんね。







図書室。地球儀や天体球儀も置かれています。








ファイアンス[faïance]という薄い繊細な陶器はアルザスの名産。








銀行で使われていた金庫。鍵の複雑さが驚異的です。




遊び心あふれるトロンプ・ルイユの陶器たち。










仕掛けをむき出しにし過ぎて、時間が極めて分かりずらい時計。




金銀細工もこの上なく繊細です。






少しカクカクした螺旋階段。
トポフィリ展以来、螺旋階段を見かけると反射的にシャッターを切ってしまいます。