4/29/2012

雨のGiverny


4月も終わろうとする日曜日、
ナビ派仲間であるヴュイヤールさんと2人で雨に濡れたGivernyを訪れました。

目的は、ジヴェルニー印象派美術館で開催中の「モーリス・ドニ―永遠の春」展です。
季節に合わせて、ナビ派の画家ドニが春をテーマに描いた作品を集めた展覧会。

ドニが暮らしたサン・ジェルマン・アン・レーの花咲く春の風景画や、
作曲家Ernest ChaussonやパトロンGabriel Thomasの為に制作した壁画には、
バラ色の花々に囲まれた女性たちが描かれています。
そして愛妻家ドニにとって、春は何よりも妻マルトに捧げられた季節だったようです。
また、受胎告知や4月の復活祭を主題にした宗教画と日常の風景を結び付けた
シリーズも展示されていました。

個人蔵の作品も多く出品されていて、
世界中のコレクターの元に散らばったドニの小品に思いを馳せ、
カタログ・レゾネ制作の苦労を慮りました。


美術館入口。藤棚はまだ育っていないようです。


調査でお世話になっているファビアンヌさんのインタビュー。


そして、せっかくGivernyまで来たのでもちろんモネの家にも立ち寄りました。
しとしと雨が降るなか、咲き乱れる花たちと変わらない佇まいの邸宅。
室内は撮影NGですが、パステルカラーの室内に浮世絵が所狭しと並んでいます。

傘の行列が可愛らしかったのでパシャリ。


薄いモーヴ色が美しいライラック。
この色を写真に収めるために、RICOH CX1を奮発したのです。

チューリップの色合いもさまざま。


バラの花びらはなめらかで心地よい手触り。
写真を通しても匂い立つ色香がありますね。


この青い小さな花はブルンネラという名前のようです。
もう少し可憐な響きの方が似合う気がするなぁ。


モネの庭は、花畑という言葉がぴったりです。
彼は絵を制作する以外の時間を庭仕事に費やしていたようです。
だから、モネの肩書きはきっと「画家、庭師」となりますね。なんだか素敵。





なかなかワイルドなヘアスタイルの鶏。モネも飼っていたんでしょうか...。

続いて睡蓮の庭の方へ。
若竹が生い茂り苔が生したこの一画だけを見ると日本の風景のようです。


そしておそらくみなさんの想像よりかなり広々とした睡蓮の庭。
日本の浮世絵でみた風景を愛し、この池を作らせたというのだからすごいです。


睡蓮の花の季節は6月のようですが、
花の咲いていない雨の池もモネはたくさん描いています。
オランジュリー美術館の《睡蓮》の連作も、この庭も、
それぞれが「画家、庭師」であったモネの作品に思えてきました。

でも、足元に水平に広がる水面と
目の前に垂直に立ち上がる絵画を見る感覚は全くの別物。
このあたりにモネの睡蓮の秘密がありそうです。

樹の幹が視覚を遮るこんな構図の作品もありますよね。

雨粒の写真を撮るのが好きです。


帰り道、Vernonに立ち寄りました。
ボナールも暮らしたパリから電車で1時間ほどの小さな街です。
Vernonからバスで15分くらいでGivernyに着くので、二人はご近所どうし。
ボナールがモネの庭を訪れた写真もあります。

白いひげもじゃおじいさんがモネ。
ボナールは相変わらず曖昧模糊と庭を眺めていますね。

駅から10分ほど歩いた広場の壁の向こうに、旧市街が見えます。

そしてたどり着いたのがVernon美術館。古いお屋敷のような建物でした。
電車の時間が迫っていたので、滞在時間は15分ほどでしたが、
ボナールの小品2点があることを確認できて良かったです。


のどかな田舎の風景の中を歩き回り、
可愛らしい一軒家カフェでショコラを飲みながら、
あこがれの果樹園のある庭について語り合い、
理想の暮らしに思いを馳せる一日となりました。


4/27/2012

きゃふん


犬の愛らしさと哀愁をこれほどまでに漂わせる
絵と言葉がいまだかつてあったでしょうか。



仙厓は天才。

Buttes-Chaumont公園


パリにもようやく春が訪れつつあるということで、
留学仲間である3人のランボーさん、プルーストさん、マリヴォーさん、
マラルメさんとともにパリの北東部に広がるビュット・ショーモン公園を訪れました。

実はここ2、3週間、パリは連日曇り時々雨、ごくたまに晴れという天気なのですが、
写真に写っている白い小さな神殿で雨宿りしつつ、
幸いこの日のピクニックと散策は空の下で楽しむことができました。

この神殿のふもとにあるベンチに座りサンドイッチやワインでランチ。
私ももっと気合いを入れてお料理すれば良かったなぁ。
でもプルーストさんにマドレーヌを食べていただけてよかったです。


お腹が満たされた後は公園内を散策です。
この公園は、ナポレオン3世の都市計画によって採石場から公園に生まれ変わった
という歴史があり、樹々や草花に覆われた大地のところどころに
不思議な空間が開けています。




洞窟に吸い込まれる先輩たち。
ちなみに私はこれまで家では長女で、大学でも後輩たちと過ごすことが多く、
職場では最年少だったものの、中身が自称中学生な男性陣に囲まれていたりしたので(笑)、
パリに来て本当に素敵な先輩たちにお世話になりながら、
人生初の妹ポジションを謳歌しています!




敷地内には3つの滝があります。人工とはいえ、なかなかの迫力。
洞窟の奥に滝、というシチュエーションも雰囲気がありました。






さっきまで雨が降っていたと思ったら、
もくもくの白い雲と青空。




蜂の巣かと訝しがりながら近づいてみると、
木の幹が変形してしまったようです。ちょっとグロテスク...。











公園は起伏が激しく、上方から滝を見下ろせるスポットもありました。
ランボーさんも高所恐怖症であることが判明し、ちょっと親近感。





お花畑の向こうにぽつんと置かれた台座。
本当は上に彫像が立つ予定だったのでしょう..。



じゃれまわる犬たち。公園ではおなじみの光景です。
ちなみに、この後立ち寄ったカフェで見つけた小さい犬をなでなでし、
約数ヶ月ぶりの犬エキスを補給しました!




夜はバスク地方のお料理を出すレストランで晩餐会。
すごいボリュームに驚きながら(サラダが大きなボウルで出てきます)、
初のバスク料理を堪能しました。




すっかり酒豪キャラとして定着してしまったので、
これからも明るく酔いたいと思います。

4/19/2012

One Shot



エコール・デ・ボザールの学生たちによる展覧会に行ってきました。
ボナパルト通りにあるアトリエには、
もはや自分の大学よりも足繁く通っているかもしれません。


日本館の展覧会に参加してくれているVilmouthアトリエの学生たちとは、
気付けばすっかり打ち解け、彼らの展覧会にも毎回顔を出すようになりました。
何より、現代アートの話をできる同世代の仲間ができたことが嬉しいです。

同じ時間と空間を共有して、純粋に何かを一緒に作るというのは、
一番のコミュニケーションだなと実感しました。

完全ボランティアで参加した展覧会の作業自体は大変なこともあったけれど、
こんな機会をいただけたことに感謝感謝。


ちなみに彼らは、それぞれフランス国内や海外での展覧会に作品を発表するかたわら、
月に1〜2回のペースで、一からテーマを考案した展覧会を企画し、
ボザール内のギャラリーで実現しています。

このアトリエにはインスタレーションや映像作品、パフォーマンスを
表現媒体とする学生が多いので、あるコンセプトのもとで作品を形にしていく
展覧会が一番の学びの場になっているのだと思いますが、
それにしてもすごい活力です。

Facebookに次々と上がってくる彼らの展覧会情報の数にはただ驚くばかり。


今回訪れたのは、「ONE SHOT」と題された展覧会。
ギリシャ風の柱なんかも立っている展示空間は結構広々としていて、
10人の出品作家で空間を埋めるのはなかなか大変だったようです。














ちなみに来月5月2日からはボザール内にあるシャペルで新たな展覧会を行うとのこと



七変化


まったりモード



怒りモード



ぐうたらモード



おしゃれモード



知的モード



美人モード



きょとんモード

4/15/2012

Palais de Tokyo リニューアルオープンに向けて




(ENTRE) OUVERTURE PALAIS DE TOKYO
30H NON STOP

2012年4月12日18時から13日の24時にかけて、Palais de Tokyoで
30時間ノン・ストップのプレオープン・イベントが開催されました。


Palais de Tokyoとは、パリの中では最も規模の大きい現代アート施設。
なぜ、「Tokyo」と冠されているかというと、
第1次世界大戦の同盟国であった日本の首都がセーヌ河沿い通りの名になり、
(ちなみに第2次世界大戦のときはニューヨーク通りになっています。)
この通りに建てられた万博の建物にも「Tokyo」の名が与えられたのがきっかけだそう。


というわけで、日本の現代美術とは何の関係もないのですが、
私が7年前に初めて訪れたときは村上隆の「いのちくん」が一番良い場所に展示されていて、
ミュージアムショップには村上隆グッズが溢れていたので、
パリでは「Tokyo」が現代アートのシンボルなのか〜などとぼんやり誤解していました。


今回は、10ヶ月の改修工事を経てのリニューアルオープンを4月20日に控えて、
50名近いアーティストたちが、作品展示、パフォーマンス、ダンス、
レクチャー、対談などを繰り広げるというイベントです。

12日の20時過ぎにひとり勇んで行ってみると、会場は想像を上回る長蛇の列。
確かに、パリジャンたちはよく並びます。
特に展覧会や文化関連のイベントは、2、3時間平気で待ちます。
現代美術も例外ではなかった....。


Palais de TokyoはAlma-MarceauとIénaというメトロのちょうど中間地点にあるのですが、
あろうことかIénaの駅まで列が伸びていて、この日の訪問は泣く泣く断念。


Iénaの駅前、高らかに腕をあげる騎馬像がちょっと切なく見えました。
さすがに200メートル超えの列を前に、寒空の下「よし、行くぞ」とはなりませんでした。




でもこと展覧会に関して、こんなことであきらめる私ではありません。
前日の反省をふまえて、13日は少し早めの18時過ぎに、
偶然この日の午後のシンポジウムで一緒になった友人を誘って、2度目の挑戦。
初日に比べてイベントが少なかったためか、すんなり入ることができました。


展示は、広々とした空間を生かした、体験型の大掛かりなインスタレーションが中心です。


レコードとプラスチックケースで作られたラジコンのレース場。


天井から吊るされたのは、埃まみれの廃棄物のような物体。




2階のスペースでは、何やら言葉を発するパフォーマンスが。






窓に落書きのように書かれたカリカチュアはウィットに富んでいて辛辣でした。



おそらく工事で出た廃材を、バランスだけで組み合わせ、重ねていくという
パフォーマンス/インスタレーション。ここだけは空気が張りつめていました。



カラフルな舞台を背景に突然始まったのは、ダンサーのパフォーマンス。






小さなスペースでは映像作品の上映やコンフェランスも行われていました。



とにかく、Palais de Tokyoの内部は広く、複雑に入り組んだ迷路のようで、
そんな空間を手探りで進みながら、
ひとつひとつの境界が曖昧な作品を渡り歩くというのは、
知覚を総動員する作業です。


現代美術を見るのは好きだし、
好奇心の赴くままに足を運んでなるべく多くのものを吸収するようにしているのですが、
まずは展示論に関して、本棚に並べた(ままになっている...)
Brian O'Doherty, Nicolas Bourriaud, Georges Didi-Huberman, Jacques Rancièreらの
著作をちゃんと勉強して、歴史的・分析的な視点も持てるようになりたいと思います。