6/01/2012

Festival de l'histoire de l'art à Fontainebleau


エルナニ観劇の後bellevilleのバーで夜遅くまでみんなで語らった翌日....
フォンテーヌブローの森まで遠出をしようか散々迷いましたが、好奇心が勝ちました。
のんびりぼやぼやした私ですが、フットワークの軽さだけは自慢できます。


       



今年第2回目の開催となるFestival de l'histoire de l'art、訳して「美術史祭り」。
フォンテーヌブローの広大な宮殿や近隣の施設で
さまざまなイベントが繰り広げられます。

映画上映、コンサート、展覧会、レクチャー、講演会、学生による発表、
美術史関連書籍の販売などなど。

学術的な専門性を維持しつつ、一般の人々にも美術史の裾野を開くというのが
目的だと思いますが、どれほどの盛り上がりを見せているのか
せっかくの機会なのでこの目で確認したかったのです。

確かに、現代アートの祭典であるアート・フェアやビエンナーレ、トリエンナーレは
世界各地のみならず日本中でもこれでもかというくらい開催されている一方で、
いわゆる美術史の研究対象となる過去の美術をテーマにしたフェスティバルというのは
あまり聞かないですよね。

ちなみに6月1日から3日に渡る3日間の会期中、私が訪れたのは1日目だけです。



まず 向かったのは「葛飾北斎の建築見本図」に関する討論会。
日本からは稲賀繁美氏と西田政嗣氏が参加されていました。


稲賀先生は、19世紀後半のフランスにおける北斎受容について、
従来のジャポニスム研究から一歩踏み込んだご発表。
とりわけ当時のフランスにおける産業美術の台頭と日本趣味との関係は興味深かったです。


西田先生の発表は、北斎漫画に掲載された建築図と、当時の大工による建築見本集、
そして実際に実現された建築物の写真を比較するというものでした。


午前中だったことと、会場が奥まった場所にあったせいか聴衆は10数人程度でしたが、
発表後にはいくつか質問もとんで、充実した内容でした。
北斎、建築、ジャポニスムというキーワードで興味をもつ人はたくさんいると思うので、
もう少し広報に力を入れると良かったのかな。 

あいにくの曇り空でしたが、お昼は広大な庭を少しだけ散策。



残念ながらフォンテーヌブローの森まで降りていく時間はありませんでした。


午後は、予約がないと入ることができないPetits Appartementsの見学。
当日だめもとで受付に行ってみたら運良く空きがありました。


ヨーロッパを旅行していると、色々な街で宮殿を訪れる機会が多いのですが、
建築様式についての中途半端な知識しかない私にとって、
よほどのインパクトでもない限り、
それぞれの宮殿でみた豪華絢爛な室内装飾は、記憶のなかで渾然となっています。


ただ、ナポレオンが使用していたというPetits Appartementsは少し違っていました。
様式うんぬんの話ではなく、ほとんど修復が施されておらず、
200年以上の時の蓄積による崩壊が、一部そのままの姿で晒されているのです。


椅子は繊維がほつれてボロボロに...亡霊でも座っていそうな佇まいです。



ヴェルサイユ宮殿はじめ、あらゆる宮殿を見てきたであろう訪問者たちも、
ありのままの姿に、新鮮な驚きの声をあげていました。






もちろん、修復済みであったり痛みの少ない部屋や家具もありました。
アメジストのイヤリングを付けたガイドのお姉さんがとても素敵。




続いては、修復によって完全復活を遂げたGrands Appartementsの見学。
12世紀から18世紀まで、歴代の王たちが狩りを楽しむ間の住まいとした宮殿は、
それぞれの時代を反映した装飾が混在しています。



マリー・アントワネットのお化粧台。


「むつごい(香川の方言で、外見や中身が過剰な様)」の極地を体現したような間。

百合の紋章がプリントされた、まさに王様の椅子。



最後は、三位一体のシャペルで、アルタミラからマックス・エルンストまでを俯瞰する
「線の美」についてのレクチャーを聞いてきました。




フォンテーヌブローでの美術史祭り、
敷地が広大だったせいか人影もまばらな印象でしたが、
やっぱり主催者や発表者たちの交流の場という性格が強いのかなと思いました。


また、同じタイミングで10も20もイベントがある時間帯もあったりして、
少しプログラムの数が多すぎる気も...。
何千人も押し寄せるイベントではないため、きっと改良の余地があるでしょう。


会場では運営に関わっていると思しき若い学生達が熱心にアンケートを取っていて、
まだ2回目だから、今後の展開に注目していきたいと思います。



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