1/03/2013

Ai Wei Wei & Marina Abramovicドキュメンタリー映画



最近、パリで2本のドキュメンタリー映画が封切りになり、

早速見に行ってきました。

ひとつめは、Ai Wei Weiの「Never Sorry」。

中国人アーティストAi Wei Weiといえば
日本では2009年に森美術館で大規模な個展がありましたが、
私は2010年に白金高輪のMISA SHINギャラリーで見たキューブライトが
鮮明に記憶に残っています。



この作品を見ていなければAi Wei Weiの印象は違っていたかもしれないので、
誘ってくれた大学の後輩に感謝です。

2011年の春に中国政府に勾留されたというニュースが世界を駆け巡り、
デモやソーシャル・メディアを駆使した大規模な署名活動にまで発展、
その後無事に保釈、2012年にはパリのJeu de Paumeで個展が開催されました。

ドキュメンタリー映画「Never Sorry」はそんなAi Wei Weiに密着し、
プロジェクトの準備や家族との時間、保釈後の様子、
作品や現代の中国についてのインタヴューなどかなり踏み込んだ内容となっています。

ときに殺伐とした光景もありますが、動物や子どもに囲まれ、
お茶目なAi Wei Weiの様子が伝わって来る映像です。

そしてアーティストを取り巻く現代中国の状況の厳しさや不条理さに直面しても
決して悲観せず、ときにそれをユーモアにすら変えて、
何かを生み出し続ける姿はとても魅力的でした。


ふたつめは、Marina Abramovicの「The Artist is present」。

2010年に開催されたニューヨーク、MOMAでのアーティストの大回顧展の舞台裏。
展覧会タイトルが示す通り、マリーナ・アブラモーヴィチ本人が
会期中、開館から閉館までのあいだずっと会場の椅子に座り、
まさにそこに"Present[存在する]"という試みが話題を呼びました。

私が彼女の作品を初めて知ったのは、2004年の春、
地元の猪熊弦一郎現代美術館で開かれた個展です。
すでに上京していたので、春休みに帰省したときに見たのでしょう。
現代アートはおろか、美術といえば印象派やゴッホを思い浮かべていた当時の私には、
同じ「アート」として展開される彼女のパフォーマンス、すべてが衝撃でした。

アブラモーヴィチは1997年にはヴェネツィア・ビエンナーレの金獅子賞を授賞、
(ちなみに同年に開催された世田谷美術館の「デ・ジェンダリズム」展にも出品)
2004年にはすでに世界的に知られている作家だったのですが、
そんなこととはつゆ知らず、
自らの肉体を痛めつけるようなパフォーマンスを続ける背景と必然性をもった
途方もない女性アーティストと映りました。

この衝撃はのちのちにまで残っていたようで、
大学院の入試のときに、(妙な試験でどんな主題でも論じられる問いだったので)
咄嗟にこの展覧会を思い出してアブラモーヴィチについて書いたのを覚えています。
そして、2010年にはニューヨークの展覧会にも足を伸ばすことに。

1週間の滞在中に2回ほど展覧会を訪れましたが、
しばらく彼女の姿を見ていたものの、それほど長く留まることができず、
今回のドキュメンタリー映画を見て、
改めてあのときMOMAで起こっていたことを少し理解できたように思います。



いずれの映画も、アーティストという肩書きを超えて、
それぞれ異なる社会的背景を背負って現代を生きる2人の人間の
生き様を描いた作品。


日本で公開されるかどうか分かりませんが、
美術に関心がある人、政治に関心がある人、社会問題に関心がある人...
ジャンルの垣根を超えて、すべての人に見て欲しい映画です。


0 件のコメント:

コメントを投稿