5/28/2012

BaselへBonnard展を見に


すっかり旅行記をひとつ忘れていました。
5月の2週目の土曜日、会期終了間際のボナール展に駆けつけるため、
コロックの合間を縫ってパリからバーゼルへの日帰り旅行をひとり敢行しました。

パリからTGVで3時間と少し。
草原や家々が流れていく車窓を見ながらうとうとしているとあっと言う間です。

駅は重厚な雰囲気。スイスはフランの国なので、駅には自動両替機や窓口がずらり。
とりあえず20ユーロほど両替してみたけれど、街中ではユーロも結構使えました。



緑色のトラムとバスが主な交通手段。


トラムに乗って、いざ出発。目指すは郊外のリーヘンにあるFondation Beyeler美術館



スイスのトラムは、時間に正確、車内も綺麗、揺れも少なくて静か....
ついパリと比較してしまいます。






30分ほどで目的地に到着。入口に並んだポスター。期待が膨らみます。



ちょうどお昼時なので、美術館のお庭にあるレストランでランチ。


野菜のパイ包み焼き、きのこのクリームソースをいただきました。
こくがあってとてもおいしかったけど、この一皿とハーブティーで25フラン、
約2000円はやっぱりスイス・プライス....。


ちなみに、Beyeler財団では現在Jeff Koons展も開催中。
お庭にはSplit-Rockerが鎮座していました。





さて、いよいよ美術館へ。写真では何度も見たことのあるレンゾ・ピアノの建築。
いつもはジャコメッティの彫刻が置かれている展示室に、ボナールの作品が見えます。



展覧会はテーマによって構成されていて、
パリの街路から始まり、庭、ダイニングルーム、マルト、浴槽、鏡、窓と
ボナールが画業を通して取り組んだ主題をほぼ網羅していました。

始めて見るプライベート・コレクションの作品もたくさんあったし、
《逆光の裸婦》とは、パリ、ブリュッセル、東京を経てかれこれ4回目の再会。
思わず「久しぶり」と声をかけたくなりました。

初期のパリの作品には、必ず通りを横切る女性の小さなシルエット。
ボナールが街行く人々に注いだ眼差しを象徴しているような気がして、
いつかじっくり分析してみたいような、そのままそっとしておきたいような、
私にとってとても大切な存在です。




そして、この作品、人物が一人描かれているんですけど分かるでしょうか??
画集で見て知ったつもりになっていた絵ですが、今回カンヴァスを前にしてはっとしました。


そして感動したのは風景画の色彩の瑞々しさ。
天井の高い開放的な空間、真っ白い綺麗な壁、そして何より自然光を取り入れた照明。
絵画の色ほど不確かなものはなく、壁の色や照明にすぐに左右されてしまうけれど、
Fondation Byelerで見たBonnardの風景画ほど眼に焼き付けたいと思った色はありません。

いままで、パリ市立美術館や川村記念美術館、葉山の近代美術館で
まとまった点数のボナールを見る機会がありましたが、
今回見た風景画が一番良かったです。


ボナールが用いた緑や青、モーヴ色を網膜にいっぱい浸透させて、
ふと視線をそらすと窓の外にも樹々が見えるという贅沢なシチュエーション。




カタログや、ボナールグッズを購入して、大満足で展示室を後にしました。




お庭では、彫刻作品だけではなく花々も愛でることができます。
今の季節はツツジが満開。




時間があったので美術館の周りも少し散策。道路と反対側には、
広々とした草原と丘、そのうえに点在する家々を見渡すことができます。



地下には修復室も設けられていました。
緑に囲まれたこんなに静かな場所でお仕事ができるなんてうらやましい。 

裏側の池には、またしてもJeff Koonsのバルーンが。

赤茶色の建築と自然の調和も計算しつくされているようです。

 Fondation Beyelerを後にし、トラムで中心地までもどります。
帰りの列車まで小一時間あったので、少しだけ街に出てみることにしました。


バーゼルはパリと同じように大きな河を挟んでふたつに別れていて、
どちらの岸に住んでいるかで、階級や政治的態度も異なっているようです。

なかなかファッショナブルな子犬。しっぽだけが白いなんて。


このあたりがバーゼルの中心地のよう。やっぱり中央駅から徒歩圏内です。
チョコレート屋さん(スイスはミルクチョコレートの発祥地)がだくさんありました。 

くまのぬいぐるみ屋さんも。みんな目がつぶらで、お店が開いていたら
どの子か連れて帰りたくなるところでした。

河辺に聳え立つ教会。赤茶色の壁に、緑色を基調にしたモザイクの屋根。
フランスで見る大聖堂とはひと味違った佇まいです。



大聖堂のふもとでは、老若男女が謎の遊びに興じていました。

河沿いには小さな家々が並んでいます。パリのアパルトマンとはまた違った趣。

そろそろ駅に戻ろうと、振り返ると、なにやら秘密の抜け道のような黒い穴が。
こういうのはやっぱり吸い込まれてしまいます。

そっとくぐり抜けると、そこにあったのは光に溢れた回廊と中庭。


予期していなかった光景にしばらく見とれてしまいました。


いよいよ列車の時間が迫ってきたので帰りは急ぎ足で。
めずらしいイモムシの看板が眼に飛び込んできたのでそれだけパシャリ。
家具屋さんのようだったけど、どうして金のイモムシなんだろう。

何とか間に合い、車内で食べるサンドイッチの夕飯を買って一安心。
駅の構内はシックで調和のとれた構造。



まだ明るい午後18時過ぎ、パリに向けての列車は定刻通り発車しました。
雲間から射す光にまどろみながらうとうと...。



こんな小さな村にもいつか行ってみたいな。

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