エコール・ド・プランタンの前週は、
パリから約1時間の小さな街アミアンに行ってきました。
「Façons d'endormis [眠りの作法]」と題されたコロック(研究発表会)での発表が目的です。
イタリア・ルネサンスからフランス近代まで、絵画における「眠り」を主題にした作品を
取り上げ、宗教や神話、文学、演劇と結び付けた解釈が試みられました。
発表者は博士過程の学生からポスドクの研究者、大学教授、美術館学芸員、
フリーの美術史家とさまざまで、1日のコロックのあいだにすっかり仲良くなりました。
「ナビ派における親密な眠り[Sommeil intime]」をテーマにした私の発表は一番最後。
それまでに他の発表者や聴講者の方とおしゃべりする時間があったので、
緊張の糸もほどよく解け、マイクを通すと自分のフランス語もそれらしく聞こえる
ような気がして、気持ちよく発表を終えることができました。
ところで、せっかく大聖堂の街まで行くということで、コロックの前日は1日観光。
めずらしく出発前にパリの北駅の写真を撮ってみました。
出発ホーム案内の掲示板はこんな感じ。
デジタルではなく、カチャカチャと表示が入れ替わるアナログ式です。
ホームの屋根や街灯も、改めて見るとパリらしいかも...。映画でたまに見ますよね。
1時間ほどでアミアンに到着。ホテルにチェックインして、まず大聖堂を目指します。
ゴシック様式のアミアン大聖堂は、フランスでも最大級の大きさ。
聖人たちが居並ぶファサードも立派です。
その聖人たちの足元で、身体を苦しそうに捩る人たちや、
いじめられたりする動物が気になりました。
いじめられたりする動物が気になりました。
かと思えば、仲睦まじく見つめ合う2匹も。
大聖堂の内部は、白い石のせいかパリのノートル・ダム大聖堂に比べて
明るく広々とした印象。バラ窓も美しかったです。
大聖堂のふもとには結構背の高いまさかの鋭角建築が....
とてもなじんではいるけれど、規制とかなかったんでしょうか。
大聖堂を後にして、運河沿いの旧市街へ。少しくすんだパステルカラーの家々。
ランチは、Ficelle(マッシュルームやハムを巻いたクレープをグラタン風に焼いたもの)と
なぜかPatate douce(=さつまいもと書いてあったけど、どちらかというとじゃがいも)
の丸焼き、サラダとパンとチーズ、苺のセット。
Ficelleの味は想像通りだけど、チーズ×クリームというのが重くて、食後苦しみました。
大聖堂裏のさわやかな公園を散歩。
ちょっとした街角の建物やお花も可愛い。
自分の足ですみずみまで歩き回れる大きさの街というのは、とてもいいなと思いました。
そして胃が落ち着いた頃訪れたのがピカルディ美術館。
30年来あちこちの改修工事が続いているそうで、現在は2階の絵画室が工事中。
その甲斐あってかセノグラフィが抜群でした。
1階の中心には、19世紀のサロン展示を思わせる何段にも重ねられた絵画作品たち。
でも配置にはどこか洗練されたものがあります。
大広間から一歩出ると、謎の幾何学×原色空間。
奥の部屋とのミスマッチが極まって、調和し始めたようにさえ見えました。
そして斬新な彫刻の間。高さも大きさもさまざまな台のうえに像が置かれ、
まさに文字通り、「彫刻の森」のような空間です。
しかし、天井がやや低いせいもあり、細部まで空間を作り込んでいるだけに、
天井からぶら下げた照明器具の存在感が目を引いてしまうのが少し残念でした。
そして地下は古代美術の回廊。最先端展示ケースと照明でピシっと決めています。
斜めのガラスケースは、反射を防ぐための工夫でしょうか。とても見やすかったです。
並べ方も秩序とリズムがあってとても綺麗。
こちらは展示室の隅っこから覗けた収蔵庫らしき棚。このカオス感にも惹かれます。
下方から照らし出すガラス瓶の展示にも目を見張りました。
四角い展示ケースもこの通り。
このケース特注かな、いくらくらいするんだろう、とそんなことばかり気になりました。
そしてピカルディー美術館で見逃してはならないのが、
19世紀フランスの象徴主義の画家ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの壁画です。
フレスコ画風の色彩が特徴で、パンテオンやソルボンヌ大学の壁画も手がけています。
最後に訪れたのが作家ジュール・ヴェルヌの家とサーカス小屋。
ナントに生まれ、結婚してからはアミアンに住んだヴェルヌの邸宅が、
いまでは記念館として公開されています。
作家の住まいや愛用の品々を保存・再現しつつ、
物語の世界も味わってもらおうという工夫に富んだ空間。
そしてヴェルヌが建設に深く関わったサーカス小屋。中には入りませんでしたが、
いまでもサーカスの上演が続いているようでした。
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