秋の深まりの感じられるようになったレンヌで
9月27日(木)から29日(土)にかけて、
シンポジウム「ジャポニスムの領域」が開催されました。
2012年にブルターニュ全域で展開されているジャポニスムをめぐる展覧会の
関連企画の一環として催されたものです。
タイトルの「Territoires[領域]」という言葉には、
画像を比較することで構図やモチーフの影響関係を探る
従来のジャポニスム研究の枠を越えて、
人々の交流や政治経済、そして何よりブルターニュの地理的な条件が
ジャポニスムという現象にいかに作用したかを問うという意図が込められています。
そのタイトルに応えるように、
日仏から参加した19人の発表者たちの研究内容は多岐に渡っていました。
沖縄那覇から渡った工芸品や、憚りの椅子、春画、
アジアのアレゴリーに見る日本人娘のイメージ浸透の経緯、
フランスにおける日本の木版およびその技術の普及、
パリの日仏協会が19世紀末から20世紀初頭に果たした役割、
フランスで本の装丁に用いられた日本の千代紙など
これまであまり語られることのなかったジャンルに踏み込んだ発表。
フィリップ・ビュルティのコレクション目録調査、
美術批評家ギュスターヴ・ジェフロワによる日本美術についての言説といった
当時の美術批評家たちが残した資料の調査研究。
フランスの産業美術のひとつである陶器への日本美術の影響、
伊万里焼の流布といった陶器のジャポニスム。
また、フランスだけでなくアメリカの室内装飾におけるジャポニスム。
そして、日本人研究者により紹介された
河鍋暁斎とフェリックス・レガメの交流、暁斎の作品イメージの伝播、
ブルターニュBréhat島で制作に励んだ久米桂一郎の画業。
さらに、日本の文学作品、とりわけ俳句の受容にまで及んだ、
ジャポニスム研究の射程の広さを証明する濃密な3日間でした。
ジャポニスム研究の第一人者ゲイブリエル・ワイズバーグ氏は
Robert Blumが日本で撮影した写真とそれを元にした水彩・絵画作品についてのご発表。
学問の領域として純粋に刺激を受けながらも、
フランス近代美術を専攻する日本人研究家にとって、
ジャポニスムがほとんどオブセッションとしてつきまとうような
感覚にも襲われた3日間でした。
大学構内ではシンポジウムの開催に合わせて
日本の近現代写真家たちの展覧会がオープニングを迎えていました。
レンヌで植田正治や奈良原一高を見られるとは。
ところでブルターニュといえば日本でもお馴染みガレットが郷土料理です。
3日間お昼は息抜きも兼ねてレンヌ大学から程近いSaint Anne広場でガレットランチ。
白カビチーズやシードルのジュレ、生ハムなどパリとはひと味違うガレットの具材たち。
3日間食べても飽きませんでした。
ブルターニュの玄関口レンヌは、文化施設も充実しています。
調べてみると、フランス国内で初めて地方の公的資金を投入した
現代美術館を建設したのがブルターニュだそうです。
中に入る時間はなかったけれど、現代美術館や図書館が一緒になった複合施設の
まわりには人がたくさん集まっていました。
レンヌ美術館では、浮世絵と着物の展覧会を開催中。
姉妹都市の仙台から贈られた着物と、
日本人医師のコレクターによって寄贈された浮世絵。
改修工事を経て生まれ変わったレンヌ美術館は、
7年前に訪れたときの面影もなく、
色鮮やかな壁の新しい装いになっていました。
小さな壺の展示が可愛かった。
驚異の部屋を彷彿とさせつつ、現代の照明技術を駆使した展示空間。
絵画展示室の壁紙もカラフル。紫色はなかなか勇気がいる色だと思います。
レンヌ美術館が誇る代表作のひとつは、こちらルーベンスの《虎狩り》。
作品自体が大きいうえに、画面全体に動きが満ちていて、
実際に見ると非常に迫力があります。
もちろんゴーギャンやナビ派の作品も。
現代美術のコレクションも充実していました。
最終日、美術館を出るとすっかり晴れ渡っていたので、
7年前の記憶をたよりに街を散策。
そして見つけました、おいしいクレープ屋さんのある通りを。
名前は全然覚えていなかったのですが、坂道を登ったところにある
石畳の道という地形だけは頭のなかにぼんやりと浮かんでいました。
昔来たときは夜だったので、内装までははっきり覚えていませんが、
お店の大きさといい、雰囲気といい、間違いありません。
クレープに、ブルターニュ名物キャラメル・サレ、
そして自家製のチョコレートと生クリームという夢の競演。
ほっぺが落ちそうなくらいおいしかったです。
3日間の滞在中4枚目のクレープをおいしく食べ終え、
日が傾きかけた広場を抜けて帰路につきました。
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