今年開館60周年を迎える竹橋の東京国立近代美術館では、
「14の夕べ」と題して、8月26日から9月8日まで、
毎晩ダンスや音楽、パフォーマンスが繰り広げられるようです。
普段なら閉館してる夜の美術館でのイベント、
というだけでワクワクしてしまいますよね。
しかも会場はカラッポの企画展示室。
東近美に通い詰めた人なら、空間の変化も合わせて2倍楽しめそう。
ところで、「14の夕べ」はイベントとして開催されるものですが、
最近ではそんなにめずらしくなくなった美術館の夜間開館。
東近美(金曜は20時まで)をはじめ、国立西洋美術館、国立新美術館、
ブリジストン美術館、原美術館、Bunkamura ザ・ミュージアム、ワタリウム美術館
サントリー美術館、三菱一号館美術館、東京オペラシティアートギャラリーなどなど
曜日を限定して18時以降も展覧会を開けている都心の美術館はたくさん。
森美術館に至っては火曜日(17時まで)以外は毎日22時まで開館しています。
ちなみに欧米圏の美術館でも夜間開館はもはや常識。
パリでも、ルーヴル美術館は水曜と金曜が21時45分まで、
オルセー美術館は木曜日が21時45分まで、
ポンピドゥーは普段から21時まで開いていて、
木曜はなんと23時まで現代アートに触れることができます。
短い滞在期間でなるべくたくさんの美術館を回りたい旅行者にとっては、
(あんまりいないか...)有難いサービスですよね。
しかも、夜間開館の方が空いていることも多いです。
ですが、美術館が閉館時間を伸ばしている一番の理由は、
平日の日中はお仕事で自由時間がないという人にも展覧会を見てもらうため。
仕事帰りに気軽に立ち寄ってほしい、というのが願いです。
そんな夜間開館、きっとここ数十年で普及した美術館の戦略なんだろうな〜
と思っていたら、研究の資料集めの合間にこんなものを見つけてしまいました。
1895年に著したMusée du Soir aux Quartiers Ouvriers(労働者たちの界隈の夜の美術館)
という本です。
ちなみにジェフロワといえばセザンヌが描いたこの肖像が有名。
モローやドーミエ、コロー、モネ、ルーベンス、ベラスケスといった作家論の傍らで、
美術館についての原稿もいくつか執筆しています。
という一文からはじまるジェフロワのこの本は、労働者たちが一日の仕事のあとに
訪れられるような夜間も開館する美術館の創設を提案する内容。
彼らが芸術を見てそこで感じるであろう共感を通じて、
見ることの喜びを育むこと、これが第一の目的です。
そして、実際の作品に触れることで、
彼らが物を作る欲望も刺激されるであろうと、
労働への還元も謳われています。
ただし、中世美術館やルーヴル美術館、装飾美術館といった
パリの中心部にある美術館を遅くまで開けるよりも、
とりわけ、労働者が多く住む3つの界隈—le Tempe, le Marais, le Faubourg Saint Antoine,
すなわちパリの東側に集中する地域に、
労働者のための新しい美術館をつくる必要性が訴えられています。
いかにも理にかなった主張に見えるけれど、
果たして当時のパリにそんな勤勉な労働者がどれほどいたかは謎......。
夜の美術館が実現したのかどうかも調べてみないと分かりませんが、
応用芸術の産業が花開いた19世紀末のフランスで
すでにそういう発想があったというのは面白いなと思いました。
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