リヒター展を見た後、反対側のギャラリーでアンリ・サラ展を
やっていることに気付き、続けて見ることに。
やけに人が多いなあと配布されていたパンフレットに眼を落すと、
なんと訪れた日が最終日でした。ラッキー。
アンリ・サラはアルバニアに生まれ、ベルリンを拠点に活動するアーティスト。
ちなみに男性です。(私は名前の響きで最初女性だと思い込んでいました...)
昨年は国立国際美術館とカイカイキキギャラリーでも個展が開催されたみたいですね。
同じ出品作もありますが、アンリ・サラの作品は展示会場が違えばまた別物。
会場に入ると出迎えてくれたのは、向かい合うゴム手袋。
Title Suspendedだそうです。
会場内には巨大な四角い5つの枠がまばらに配置され、
その中で映像が次々と流れるインスタレーション「Extended Play」が展開されていました。
以下の4つの映像作品で構成されています。
「Answer Me」
「Le Clash」
「Tlatelolco Clash」
「1395 Days without Red」
合計すると60分になるこれらの映像が12のシークエンスに分割され、
5つのスクリーンで順番に流れたかと思えば、あるときは同時に流れ始めたり。
だから、私たちはその度に慌てて立ち上がって
次のスクリーンの方に移動しなければなりません。
ざっと50人強はいたと思うのでちょっとした大移動です。
映像が終わると、突然スクリーンが赤や紫、薄いブルーに染まり、
オルゴールの音色がスピーカーから会場全体に反響します。
ガラスの壁面に設置されたオルゴール作品「No Window No Cry」も、
自分の手でハンドルを回して同じ旋律を奏でることができます。
そのまわりには映像に合わせて自動でリズムを刻むドラム作品Doldrumsが置かれ、
教会やカフェテラス、ニキ・ド・サンファルのオブジェや噴水、そして道行く人を
ガラスごしに眺められるという贅沢な空間に。
オルゴールを回したり写真を撮ったりしていると、
顔をにゅっと近づけ笑わせてくるイタズラ好きのおじさんに2人も出くわしました。
そんな感じで言葉で説明するのは難しいですが、
会場内は、映像作品の音と、誰かが回すオルゴールのメロディー、
そしてドラムのかすかな音が重なり、
現実とフィクションが交錯する空間に。
でも、展示室内で起こること全てに感覚を開いていると、
どれが現実でどれがフィクションか、
スピーカーの音だからフィクションで、オルゴールは現実で、とか
そんな区別はなくなってしまいます。
全ては見えるものと音そのものとに還元されて、
たとえば実際のドラムの音とスクリーンの中のドラムの音の
あいだにあるズレが、現実/フィクションのズレではなく
音の質そのもののズレとして知覚されるような。
スクリーンが一色に染まるひととき、
オルゴールの音を聴きながら
眼も耳も充足したとても静かな高揚感を味わいました。
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