昨年度から、定期的に開催されるセミナーにまじめに参加し、
今年に入ってからは短い発表などもさせていただいて、
最近ではすかっりメンバーの一員に迎えられた(と勝手に思い込んでいる)ITEM。
と言いつつも、この組織の全貌をまだ掴んでいません。
友人に誘われるままひょっこり顔を出すようになったので、
基本的な情報をすっ飛ばして、毎回の刺激的な発表にただ聞き入っていました。
しかし、一体何に巻き込まれつつあるのか気になり始めた今日この頃...。
たった今インターネットで調べてみると、
ITEM とは、 Institut des textes & manuscrits modernes の略で、
作家やジャンルの垣根を越えて、近代のテキスト・草稿を主に研究しているところらしい。
つまり、文学作品の研究が中心なのです。
(我ながらどうして今まで調べずにいられたのか....そのぼんやり具合が謎です)
気を取り直して、
ここ数年のセミナーのテーマを見てみると、
アラゴン、バルザック、バルト、フローベール、ゴンクール、
プルースト、サルトル、ヴァレリー、ゾラと錚々たる面々が名を連ねるなか、
美術史はその狭間に慎ましく身を置いています。
そもそも、ITEMという名前の中に美術史的な要素が入っていないのだから仕方ありません。
しかし、美術史支部も約10人前後という極めてアットホームな雰囲気のなか、
毎月のセミナーでは白熱した議論が交わされています。
文学においては草稿研究、美術史においては素描研究にそれぞれ重きを置く
ITEMのキーワードは Génétique 。
Génétiqueとは元々「遺伝学」を意味する生物学の用語ですが、
由緒あるフランス語の辞書Le Trésor de la langue française informatiséで
Génétiqueの語を引いてみると、「生成[Genèse]に関わるもの」という
限りなく曖昧な意味が最初に出てきます。
個々の事物の「生成」を指すGenèseに対して、
より総称的に用いられるGénétiqueは「生成論」と訳すのが適当なようです。
ちなみに2009年には東京大学で、
美術史支部の中心人物であるSégolène Le Men先生を発表者に迎え、
絵画の生成論と題したシンポジウムも開催されました。
作品を、完成され、固定された分析対象とみなすのではなく、
その生成過程に着目することで、より動的なものとして捉え直す。
ITEMの方向性をざっくり言うと、そんなところでしょうか。
今日のセミナーでは、イタリア・ルネサンスの研究者が、
ルネサンス期の美術家、理論家、文学者らが用いた
デッサンに関する用語を3時間かけて徹底的に紹介。
そこに、ルーヴル美術館のデッサン部門、スペイン美術専門の学芸員の方が加わって、
スペイン語におけるデッサン用語との対応関係を語り出し、
さらにヴァレリー研究者の方も何やら言い出して、
途中で全くもって訳が分からなくなりました。
でも、セミナー後のカフェでは、色々な国での研究生活のお話や、
Généticien(生成研究に携わる人のことをこう呼ぶようです)ならではのジョークなど
も飛び出し、楽しいひとときがやってきてほっと一安心。
ちなみに、ITEM美術史支部の最終目的は、
美術における生成研究に関わる用語辞典を各国の言葉で出版すること。
構想の大きさにくらくらしますが、
前回、日本語における「素描・デッサン」の言葉の歴史について
勢いで発表してしまったので、もうやるしかありません。
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