いま私はボナールが最晩年を過ごした南仏コートダジュールの
小さな街ル・カネに来ています。
ル・カネは港町カンヌから北に約35キロほど坂道を上った
なだらかな山の斜面に広がる街。
山の上から見下ろすと、左手には地中海、そして海の水平線から
すっと線を引いたように、右側に向かってなだらかに続くエストレル山脈。
ル・カネの山と、エストレル山脈のあいだの盆地に家々が並んでいて、
ふと歩みを止め、ぽつねんと佇みながら風景を見渡すと、
自然にすっぽり包み込まれているような安心感があります。
ボナールが1947年にこの地で亡くなってから約半世紀が経っていますが、
建物や道は新しくなっても、地形や南仏の明るい光は変わりません。
そしてはるか向こうまで点在するオレンジ色の屋根。
ボナールが描いた風景そのままです。
6年間、ボナールの絵を通して見てきた風景のなかに身を置いて、
何ともいえないしみじみとした気持ちになった朝でした。
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