今学期、ケ・ブランリー美術館の映画上映室で開講されている
現代アートにおける作家と作品、観者の関係をテーマにした大学の授業に出席していて、
授業の出席者は年間パスを作ってもらえたので、
早速展覧会をひとつ見に行ってきました。
ケ・ブランリー美術館がセーヌ河沿いにオープンしたのは2006年の6月。
なんだかつい最近のことのように思っていたけれどもう5年以上前のことなんですね。
いわゆるプリミティブ・アートという名称で括られた、
アフリカ、アジア、オセアニア、南北アメリカの原始美術を展示する美術館。
シラク大統領が開館を後押ししたということもあり、
エントランスには彼の署名入りメッセージが刻まれています。
建築は、フランス人建築家ジャン・ヌーヴェル。
赤茶色の巨大な塊が柱に支えられて宙に浮いているというイメージ。
ガラスが特徴の彼の他の建築とは、少し違う雰囲気が漂う外観です。
上を見上げると、カラフルなキューヴがぼこぼこと。
そして企画展示室では、1月29日まで、日本の「サムライ」展を開催中です。
外国の方にとって、侍というのはとても気になる存在らしくて、
「侍とは何なのか?」とか、「侍は今もいるのか?」とか、よく真顔で聞かれます。
この展覧会も、侍好きなフランス人たちがカメラ片手に押し寄せていました。
子どもが多いのかなと思いきや、若いカップルや中年男性が結構いたように思います。
展示室に入ってみると、窓ガラスに色々な覆いがしてあって、
その影が展示台に写り込んでいて綺麗でした。
今年が辰年であることを意識してか、龍の飾りがついた兜や甲冑がたくさん。
写真に撮るとよく分からないんですけど、深紅の部屋に黒々とした兜がずらり。
こういう超洗練された展示は、ケ・ブランリーという感じです。
暗い中に、展示物だけをぱっと浮かび上がらせるというか。
リニューアルオープン後のオルセー美術館のクールベや印象派の展示室も、
そんな見せ方をしています。でも私はあまり好きじゃありません...。
この騎馬像の前で、天使みたいな小さい男の子が大興奮していて可愛かったです。
こちらは、常設展示室。
開館に当たっては、元々民族資料と考えられてきたものを美術館で美術品として
展示することに関して議論もあったようですが、
この展示空間は、美術品に見せるための行き過ぎた演出に映ってしまいます。
もちろん、ひとつひとつの展示品を美しく見せるための置き方や照明を
試行錯誤した結果だとは思うのですが。
完全にそれぞれに固有の文脈から切り離されてしまっている感が否めません。
展示台ケースや展示台もユニーク。ちょっとしたテーマパークです。
赤い部屋の奥深くに置かれた仏像。
地方ごとに壁で仕切られているわけではないんですが、
自然を意識したような土壁っぽい曲線で何となく導線が引かれています。
そして、やっぱり地域ごとに取り上げられている展示物の数の差が激しかったり
そもそも取り上げられていない地域もあります。
なので、展示室をぐるりと一周してみて抱いたのは、
「あ〜、世界のプリミティブ・アートを堪能した!」という充足感ではなく、
この展示室から溢れてしまった数多の文明や美術品、工芸品の存在を感じつつ、
近代的な意味での美術作品ではないものを扱うときの難しさでした。
おそらく、ケ・ブランリーに展示されている作品の多くは、
造形的な価値だけではなく、呪術的な意味合いが強いのではないかと思います。
エントランスに降臨した2人の侍。
エッフェル塔も近いです。
0 件のコメント:
コメントを投稿