かつて多くのボヘミアン芸術家たちが集ったモンマルトルの丘。
古き良き時代を彩った画家たちの作品を収蔵展示する場として、
1960年にモンマルトル美術館が開館しました。
この17世紀の建物には、
当時ルノワール、ユトリロ、ヴァラドン、デュフィといった
画家たちがアトリエとして滞在していたそうです。
美術館の建物だけではなく、この界隈一帯に広がる
古い建造物と石畳の狭い路地がパリの趣きを醸し出しています。
そんなモンマルトル美術館では、2013年の1月13日まで、
「Chat Noir[黒猫]」展を開催中。
Théophile Alexandre Steinlenによって描かれたこのポスターを
見たことがある人も多いのではないでしょうか。
Chat Noirとは、Rodolphe Salisという人物が1881年に
モンマルトルに開いたキャバレーの名前です。
そこに芸術家や文学者が集って、
彼らが室内装飾やポスターのデザイン、雑誌の出版などを手がけました。
そこにはロートレックやヴュイヤール、グラッセ、リヴィエールらの名前も。
当初は本当に小さなキャバレーだったようですが、
経済的にも成功を収めて移転し、最終的にはクリシー大通り68番地に落ち着きました。
クリシー大通りのChat Noir 1929年撮影
展覧会では、手紙や雑誌等豊富な資料や絵画作品によって、
彼らの活動の軌跡を追っています。
とりわけ眼を引いたのは、版画家アンリ・リヴィエールが中心となって
キャバレーで上演されていたThéâtre d'ombres[影絵劇場]の再現展示。
Albert Robidaのこのリトグラフにも影絵が描かれていますね。
画面の中に生き生きとしたシルエットを映し出したChat Noirの影絵劇場は、
一般の観客だけではなく、画家たちをも魅了しました。
とりわけナビ派の画家への影響については、
Patricia Eckert Boyerによる以下のような研究があります。
The Nabis, the Parisian Vanguard Humorous Illustrators and the Circle of Le Chat Noir,
University of California, 1982.
キャバレー「Chat Noir」の雰囲気を堪能して美術館の庭に出ると、
展覧会の噂を聞きつけてやってきたのか、
黒猫がおとなしく私たちの帰りを見送ってくれました。
さて、芸術の秋に続いて食欲の秋も忘れてはいけません。
折しも10月2週目のモンマルトルは葡萄収穫祭の真最中。
モンマルトルにある葡萄畑から生産されるワインは年間わずか1000本だそうですが、
収穫祭のあいだは、フランス各地からワイン生産者が集結し、
試飲をしたり、グラスで一杯やったり、ボトルを持ち帰ったりできます。
この日は、ワインをこよなく愛するプルーストさんとボナールの2人で、
シャンパン、赤ワイン、白ワインを次々に飲み干しました。
(といっても試飲なので少しだけです)
小雨がちらつき寒かったこの日、暖まるために最初に飲んだのはヴァン・ショー。
このかっこよすぎる銅の製造機で作られたヴァン・ショーは、
スパイスと柑橘の香りがよく効いていて、納得のおいしさ。
そしてサクレ・クール寺院の周辺に立ち並ぶ露店では、
ワインのおつまみにかかせないソーセージやチーズもたくさん。
こちらもしっかり試食しましたが、
いままで食べた中で一番といっても良いくらいおいしかったです。
やっぱりあのチーズ(名前忘れた...)を買えばよかったな。
久々に登ったモンマルトルの丘から眺めると、空が少し低く感じました。
悪天候にもかかわらず、この人だかり。
パリにいる間に、もっとワインとチーズをたしなまなければいけないと
決意を新たにした、秋の夕暮れでした。
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