ジャックマール・アンドレ美術館では、
18世紀のヴェネツィアでヴェドゥータ(都市景観画)を描いた
カナレット(1697-1768)とフランチェスコ・グアルディ(1712-1793)の展覧会を開催中。
ここ最近のパリは灰色の雲が空を覆い毎日のように雨が降り続いています。
展覧会を訪れた日も、どんより曇り空。
高級ブティックやギャラリーが門を構える8区にひっそりと佇む瀟酒な建物は、
19世紀の銀行家エドゥアール・アンドレと、
画家であった妻ネリー・ジャックマールが暮らした邸宅。
当時は連日のようにパーティーが開かれていたようで、
パリ社交界の華やかさを伺い知ることができます。
夫婦が世界各地を旅して集めた美術品、とりわけ
イタリア・ルネサンス、18世紀フランス絵画、オランダ絵画、
そしてタピスリーや家具などの調度品のコレクションが充実しています。
カナレット・グアルディ展は非常にオーソドックスな安心して見られる構成で、
モスグリーン色の落ち着いた壁の色も主張しすぎず、
奥行きある絵画空間を引き立てていました。
全体の流れとしては、
ヴェドゥータの確立とカナレット初期の作品にはじまり、
カナレットとグアルディがそれぞれ描いたヴェネツィアの景観をメインに、
グアルディが先駆者とは異なる画風を模索した後年の作品群へと続き、
さらにラグーン(潟)、祝祭画、奇想画といったジャンルもカバーしていました。
門外漢なのであまり詳細な分析はしませんが、
彼らの作品が、現代の私たちの眼にも魅力あるものとして映るのは、
画家の眼前に広がっていたであろう実際の景観を、
遠近法という西洋絵画史上最も重要な発明を駆使しながら、
いかに絵画のなかに再構築するかという探求が見てとれるからだと思います。
そこに光や大気、水の動きが加われば、
同じ景観が無限の変奏へとひらかれてゆきます。
たとえば、ポスターにも用いられている上の作品は
カナレットが1723年にサン・マルコ広場を描いたものですが、
およそ17年後、1740年頃に同じ場所を描いた作品がこちらです。
確かに同じ場所ですが、都市の質感が全く異なります。
さらに、1785年頃にグアルディが描いたサン・マルコ広場では、
奥行きが深まり、影と光の効果でよりドラマチックな景観となっています。
もちろん、視点の違いというのはあるでしょうが、
同じ広場を描いた景観画がこれほどまでに異なる様相を呈してくるというのは
新鮮な驚きでした。
今回の展覧会は、同じ空間に並べられた作品を前に
その違いを体感することのできるまたとない機会。
会期は2013年1月14日までです。
http://canaletto-guardi.com/fr/home-canaletto
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