2/26/2012

アムステルダム


最終日は1日アムステルダムで過ごしました。
2回目の訪問なので少し安心感があります。




ホテルが飾り窓地区とダム広場の中間地点にあり、
夜散歩すると妖しいネオンが運河に映っていました。



今回の旅の目的のひとつ、開館したばかりのエルミタージュ美術館分館。
開館記念展は、やはりオランダの巨匠、ルーベンスとファン・ダイク展。
建物の外観も、展示室も、隅々まで新品です。

運河に面した正面入口。



3日目の朝は、ゆっくりと散歩しながら、アンネ・フランク・ミュージアムへ。


思わず白黒モードで撮ってみたくなる街並み。




ミュージアムの外観は、ものものしい感じになっています。
5年前は、長蛇の列に阻まれ断念しましたが、今回は入ることができました。


時代を物語る資料、アンネの直筆の日記やメモ、様々な人の証言、写真、
何よりも空間があまりにも剥き出しで、
荷物が運び出されたしまったままの状態にしておきたいというアンネの父の判断が、
胸に刺さりました。


西教会の前にはアンネの銅像が佇んでいます。


次に向かったのが、Huis Marseilleで開催中の畠山直哉さんの展覧会、Natural Stories。


シエル・トンベ、ブラスト、テリル、アトモス、ライム・ヒルズといった
見慣れたシリーズが1階から3階へと続きます。


ブラストのシリーズでは、額に収められた写真を見ていると突然光が落ち、
連続写真のプロジェクションが始まるという見せ方がとても劇的でした。
肉眼では決して見ることができない瞬間が、写真を通して見えるようになる驚き。


今まで、畠山さんの写真は日本国内の美術館でも何度か見る機会があったし、
畠山さん自身の文章やインタビューなども読んで、写真を語る言葉がとても明快なので
何となくスタイルや、こういう写真を撮る人なんだという私なりの理解はありました。


でも、津波の跡を写した写真に関しては、それが展示されていることも知っているし、
それを見なければという気持ちで来たのだけれど、
正直なところ展示室に足を踏み入れるときに、
これまでの理解や解釈をもって作品と対峙するという姿勢を保つのが
とても難しかったです。


ただ、細部まで鮮明に写し出された写真には、
映像で見るよりもまざまざと津波の時間が流れ込んできているようで、
また当たり前のように穏やかで美しい空と海面には、
3月11日以降も否応なしに月日が流れていることを実感しました。


畠山さんは常々生まれ故郷が自分の視覚体験の原点であると語っていましたが、
震災前の地元を写した風景を見ていると、
低い堤防や、そのすぐ脇を走るセメントの道路、
点々と建つ民家や道行く老人、光の調子など、
同じ海沿いというだけでここまで、
というくらい私自身の故郷の風景に似ていて、
それは私が感情移入するというよりも、
畠山さんの写真の方がすっとこちらに入ってくるような感覚でした。


私も18年育った瀬戸内海の風景が自分のものの見方に染み付いていると思いますが、
もしもその場所が無くなったとき、変わり果てた姿を目の当たりにしたとき、
何か変わってしまうのだろうかということをずっと考えていました。







午後は郊外のコブラ美術館へ。
ここは、個人的な思い入れがあって訪れてみたかった場所です。
地図を忘れて思い切り道に迷いました。

折しも、クレーとコブラ展を開催中。


コブラとは、戦後の20世紀半ばに結成されたオランダの前衛グループ。
会場構成は、東京国立近代美術館でのクレー展を彷彿とさせるジグザグの壁です。
どこでもドアがあったら、クレー展企画者の方を召還したかったです...!!
今度会った時にお話しよう。

いくつかのテーマに沿って、クレーとコブラの作家たちの作品が並べられていました。

コブラの特徴は、明るい色彩と、荒々しい筆致。

 クレーの作品の充実ぶりには眼を見張るものがあります。




その後、駆け足でミュージアム広場まで戻って、久々のゴッホ美術館。
ここでの発見は、19世紀のパリ版画展で見つけた、
ボナールの書込みがある試し刷り版画。色のトーンが細かく指示されていました。
画像が載っていることを確認して、この旅4冊目のカタログを迷わず購入...!!





最後は、改装工事中のアムステルダム国立美術館。
美術館前にミュージアム・ショップが建っていたり、仮説小屋があったり、
謎の「I amsterdam」オブジェができていたりと何だかごちゃごちゃしていましたが
入口は左側。今はおそらく改装が終わった空間で主要作品だけを見せているんだと思います。



最初の空間は、大航海時代のオランダの繁栄ぶりのアピール。
大砲とか船とか戦利品とか....


展示空間自体はとても綺麗です。


2階へと続く階段。



2階は絵画作品の展示室。
何と壁に装飾模様が入っていました。
しかも壁紙ではなくすべてペンキで塗ってあります。


明るく、広々としていて、作品に集中できました。
何よりも人が少ないというのが一番の理由かもしれません。



オルセー美術館にしても、アムステルダム国立美術館にしても、
おそらくホワイトキューブから転じて、展示空間を、作品が制作された当時の
雰囲気に近づけるという意図があるのだと思いますが、成功しているのかどうかは
タイムマシーンでも発明されない限り確かめられませんね。





最後のサプライズが夜警。黒の背景に、LEDでピカーっと照らし出されていて、
昔見た記憶や、図版のイメージが吹き飛びました。
ちょっと明るすぎなのではないかな...。







そんなこんなで、内容の詰まった展覧会を1日に4つも5つも訪れるのは
いかがなものかと自分でも思いますが、
それぞれの作品の前ではひたすら集中して、
移動中に頭を切り替えるという術を身につけられたように思います。

ともあれ、こんな長いブログを最後まで読んで下さった方、
ありがとうございました。



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