マリヴォーさんとボードレールくんを誘って
パリの春の祭典、Salon du dessin と Drawing Nowを訪れました。
両方とも、一言でいってしまえばデッサンのアート・フェアです。
日本語でも、「デッサン」と「ドローイング」という
言葉の響きには、そこはかとなく時代的な線引きがあると思います。
(デッサンはルネサンスから近代、ドローイングは現代というような)
たとえば、
「ドラクロワのドローイング」
「サイ・トゥオンブリーのデッサン」
というとちょっと違和感ありませんか?
どうやら、この2つのイベントのネーミングを見る限り、
フランスでも事情は似通っているようです。
もちろん、フランス語のdessin=英語のdrawingですし、
厳密な定義があるわけでもなく、あくまでも感覚的なレベルで 。
まずは、ルーヴル宮殿の地下で開催されるDrawing Nowから訪れました。
今年で7回目を迎えるこのアート・フェアは、
審査委員会によって選出された約80のギャラリーが 集い、
1960年代から現代までの作品を中心に扱います。
昨年のゼミのゲストだった
Drawing Now創始者であるChristine Phalさんの話によると、
はじまりはバスティーユの小さなギャラリーで、
企画と趣旨に賛同するギャラリーが徐々に増え、
現在の規模になったとのこと。
ところで、最初の頃は
Salon du dessin contemporainという名前だったのを、
4回目の開催からDrawing Nowに改めたそうです。
現代のデッサンを扱うという意味もあると思いますが、
Bernice Roseが1976年にMOMAで企画した
Drawing Now展も念頭にあったことでしょう。
ご覧の通り、かなりのにぎわい。
やっぱりデッサンは値段的にも、サイズ的にも
買える可能性が高いですもんね。
しかしウォルフガング・ライプのデッサンは
とても手が出る値段じゃありませんでした。
アンリ・ミショーも然り。
ボードレールくんは果敢にも値段を尋ねていましたが撃沈。
ドローイングと言っても媒体はさまざまで、
紙だけではなく本、写真、映像作品と色々ありました。
アート・フェアなので仕方がないのかもしれませんが、
全体的に散漫としていて、
Nowと謳っているにもかかわらず
現代の動向が見えずらかったのが残念でした。
続いては、お楽しみのSalon du dessinへ。
会場はBourse、旧証券取引所です。
今年で22回目のこちらのサロンは、
39のギャラリーという少数精鋭!
ルネサンスから近代まで、美術研究者、文学研究者
垂涎の作品がずらり。
壁の色もシックなワインレッド。
ユゴーとブレズダン。
ブレズダンはエッチングではなく、
インクのデッサンなのです!ひえぇ。
ため息が出るほど素敵なドラクロワの樹のデッサン。
去年も出ていたのですが、ついに買い手が決まったようです。うぬぬ。
そしてボナールの水彩画やデッサンもありました。
ボナールの小さなデッサンの前に立ち、
食い入るように見つめる私。
それに気付いて近づくステッキを携えた初老のムッシュー(貴族の家系の大富豪)が
背後から穏やかに囁く。
「そんなにこの絵が気に入ったの?僕が買ってあげよう。」
....
という妄想は今年も現実にはなりませんでした。
ブラックの年賀状も額に入れれば立派な作品。
ざっと一周した限りでの最高額は
ヴァザーリでした。
やっぱり歴史の重みでしょうか。
万が一にもそんな可能性はないのですが、
ヴァザーリでした。
やっぱり歴史の重みでしょうか。
万が一にもそんな可能性はないのですが、
それでもやっぱり目の前で作品が売られていて、
もしかしたら自分のものになるかもしれないという状態は、
美術館で見るのとはひと味もふた味も違う興奮がありました。
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