寒さも厳しくなった12月の半ば、
フランス北部の街リールを訪れました。
出発は北駅から。
"TOUS A LENS"「みんなでランスへ」という
ルーヴル美術館別館のポスターが目を引きます。
リールとランスは目と鼻の先なので、
今回の旅のプランに組み込めば良かったと後で気付きました...。
パリからリールまでは約1時間半。
ブリュッセルまでのTGVが通っているので、
距離の割にとても早く行きやすい街だと思います。
今回の旅も弾丸美術館ツアーなので、
駅に着いて早足でまず向かったのは、
Palais des Beaux-Arts de Lille。
「Fables du Paysage Flamand [フランドル風景の寓話]」展を開催中。
ディルク・ボウツやパウル・ブリル、ブリューゲル....
並み居るフランドルの画家たちの作品もさることながら、
ヒエロニムス・ボッシュの絵画をあんなにたくさん一度に
見られる機会があるとは予想すらしていなかったので、
なかなか離れ難く、じっくり見てしまいました。
迷路のような展示空間になっていて、
展示プランを配布するでもなく、順路が分かりにくかった...。
展示プランを配布するでもなく、順路が分かりにくかった...。
2階の常設展示室から見下ろして、ようやく構造を理解しました。
「バベル」という現代アートの展示も開催中。
本を積み重ねたバベルの塔。
バベルの塔は最後には崩れてしまうので、自分の机の上にはくれぐれも築かないように気を付けたいです。
常設展示室は落ち着きのある空間。
ボナールやヴュイヤールの絵画にも出会えて嬉しかったです。
左端の海の風景、ル・カネでまさにこの場所に立ちました。
予定時間を大幅に過ぎてしまい、逆方向の電車に飛び乗ったりしながら
あたふたと次の目的地に向かいます。
Lille Métropole Musée d'art moderne, d'art contemporain et d'art brut、
通称LaM。
ポップなHPを見る限りたくさんの人でにぎわっていると
勝手に予想していたのですが、
バスの駅を降りて美術館に向かったのは私ひとり。
案内という案内もなく、辿り着くまではちょっぴり不安でした。
美術館は広大な公園の一画にあります。
こちらのレンガ造りの部分はローラン・シムネというアルジェリア出身の
建築家による設計だそう。
この日、地面の草花には霜が降り、あいにくの曇り空だったのが残念。
そしてこの不思議なコンクリートの部分は、
フランス人建築家マニュエル・ゴトランによって2010年に増設されました。
後で紹介するアール・ブリュットのコレクションのための空間です。
企画展示室では「La Ville magique[魔法の都市]」展を開催中。
主にニューヨーク、ベルリン、パリに焦点を当て、
絵画、版画、コラージュ、写真、雑誌、映画とジャンルを越えた、
アーティストたちの都市をめぐる想像力の炸裂を見事に浮き彫りにしていました。
とりわけ、Martin Lewisの版画が素晴らしく、
「ニューヨークのメリヨン」と勝手に命名。
セノグラフィも、NYの摩天楼を思わせる縦に長い壁や
リズミカルな写真の展示など、すみずみまで洗練されていて、
ぜひこの展示を手がけた方に弟子入りしたいと思わせるほど。
写真NGだったのが残念です。
常設展でも充実した近現代美術のコレクションを見ることができます。
アネット・メサジェ。森美術館での回顧展がなつかしい。
ダニエル・ビュレンの部屋。
モジリアニやピカソ、ブラック、レジェ、ミロ、
カンディンスキー、クレーらに加えて、
素朴派のコレクションも。
常設展示室の作品の配置も大変すばらしく、
とりわけ絵画と彫刻の配置が完璧でした。
この美術館でスタージュしたいなぁ。。。
個人的にはアンリ・ローレンスの絵画や彫刻がたくさん見られたのも良かった!
そしてLamの名を世界的に有名にしたのが、
こちらアール・ブリュットの一大コレクションです。
Aracine財団が1999年に寄贈した3500点以上の作品の一部が、
およそ900平米の空間に展示されています。
展示室は、中心の部屋を起点に、
6つの長い部屋がたこ足のようにぐねぐねと伸びる不思議な空間。
私のつたないカメラワークではとても捉えられませんでした...。
ここでも時間をオーバーしてしまい、
慌てふためいてこの旅一番の目的地に向かいました。
駅から出ると、すっかり陽も落ち...
リールから電車で30分ほどですが、街並みはすっかりベルギーの趣き。
やってきたのはこちら、Le Fresnoy, Studio National des arts contemporains。
この日に行きますと、写真撮影許可を請うメールを送っていたので、
受付のみなさんが暖かく迎えてくれました。
しかも偶然夜にイベントがあるそうで、遅くまで開いているから
ゆっくり見て行っていいよという有難い言葉...(涙)
目的は、
美術史と哲学、人類学を横断するような研究で知られる
ジョルジュ・ディディ=ユベルマン氏が企画した
「Histoires de Fantômes pour Grandes Personnes
[すっかり大人になった人々のための幽霊譚]」展。
簡単なレビューを、折しも同時期に東京大学で開催された
「ムネモシュネ・アトラス―アビ・ヴァールブルクによるイメージの宇宙」展の
サイトに書かせていただきました。
展示の写真はあらかじめたくさん見ていたのですが、
実際にどんな空間になっているのか、期待がふくらみます。
2階に上がって廊下を進むと...
まず現れたのはヴァールブルクによるパネル42の映像。
そしてその奥には、1000平米に映し出された大小様々の嘆きの映像。
圧巻です。
周囲を取り囲む壁には、昨年ハンブルクで見たアトラス展の"記憶"写真たち。
得意の(?)手ぶれは封印して
ちゃんと写真を撮らなければならないというプレッシャーがあったので、
まずはカメラ片手に一周して、
そのあとひとつひとつをじっくり見ながら一周、
最後に全体の空間や雰囲気を感じながらもう一周。
じっくり展示を体験することができました。
リールの駅に戻ると、食欲も出ないくらいふらふらで、
青いノエルのイルミネーションが綺麗だなぁと思って写真を一枚撮ったところで、
カメラと体力の充電がぷつりと切れました。
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